ENGINEER
INTERVIEW

研究開発で、世界のトップカンファレンスに論文を通せるような技術やスキルを磨きたい

さくらインターネット株式会社松本 亮介さん(まつもとりーさん)

公開日:2019.4.5

福岡で働くエンジニアさんへのインタビューも順調に進んでいます!

今回は、さくらインターネット株式会社の松本 亮介さん(まつもとりーさん)。

研究に対する熱い想いを聞かせていただきました。

-松本さん、今日はありがとうございます。ではよろしくお願いします。最初のおたずねですが、松本さんがエンジニアになろうと思ったのはいつ頃ですか?


まつもとりーさん
大学の時ですね。大学に入る前は、「エンジニア」っていう言葉も考えてなかったんです。パソコンにも興味なかったんですよ。
大学は理系の工学部、その中で「情報工学」っていう名前の響きがかっこよかったので、そこに入ったんですね。
で、情報工学だからパソコンが必要なので、パソコンを買ってもらって。一人暮らしでもあったので、暇な時はずっとパソコン触ってましたね。
でもそのパソコンが遅くて、安く性能のいいパソコンが欲しいと思って。
当時自作パソコンが流行っていたので、パーツ組み合わせて作ったんですよ。
で、パソコン作ったら前のパーツが余るじゃないですか。もったいないからそれで自宅サーバーとか作って。
それで、また余ったパーツで自作パソコン作って…そのうちに、家のパソコンが大量になったんですね。
でも、まだその頃はパソコン関係を仕事にするとかは全然考えてなくって。

-そうなんですか。最初の就職はファーストサーバ株式会社っていうところに入られてますよね?

まつもとりーさん
まあそこはちょっと色々あって。実は大学を留年したんですね。
情報工学実験っていう基本誰も落とさない必修科目があって。でも、落としたら留年が確定する科目だったんですよ。
その先生が割と厳しい先生で、作るのに2ヶ月ぐらいかかるソフトウェアを、僕は1、2週間ぐらいで作ってしまって。みんなに教えたりしてたんですね。
プログラム提出する時に、僕提出するものを間違えたんですよ。
当時はバージョンの管理とか僕自身あまり知らなかったので、古いファイルを送ってしまって。
結局プログラムが動かなくて、単位を落として留年。

さすがにすごいショックを受けて、でも前を向いていくしかないって思って、1年間暇になったから、自分が趣味でやってたサーバーの管理とかでアルバイトしようと。
それこそもう毎日シフトに入るぐらいのつもりで、京都にあるレンタルサーバー会社に入ったんです。
そこからの繋がりですね。働いてて仕事も楽しいし仕事するならこのまま続けよう、というふうになったんですね。

-そうなんですね。さまざまな発表とかRubyの賞を受賞されてるんですが、そもそも松本さんの専門というか、得意な分野は何になるんでしょうか?


まつもとりーさん
得意なのやっぱりそういうサーバーとかネットワークとかインターネットの基盤技術、セキュリティや運用技術、自動化、パフォーマンスあたりですかね。

-なるほど。松本さんの、さくらインターネットでの立場はどういったものですか?

まつもとりーさん
さくらに定職し直したっていうのが、前職でエンジニアのマネージメントとか、研究開発もやりつつ、プロダクトも色々作ったりしてたんですね。
でも、色々やってるうちに、色んなことはできるんだけど、一つの事をちゃんとしっかりやれてない状況があったんです。

どれも大変なんで、全部中途半端になって、例えば個々のスキルが僕と同じくらいのスキルがある人が3人揃ったら、僕の価値があまりないんですよね。
それぞれの専門性は人並みみたいになってしまって。
例えば専門領域で英語で論文書いて、世界のトップカンファレンスに通せるかって言われると、通せる技術がまだ付いていない、そういう中途半端な知識とか技術をいっぱい持ってる状況が、自分は嫌だったんです。
だから、どれかちゃんと専門してやりたいなっていう気持ちがあったので、研究開発に専念することにしたんですね。
それで、さくらでは、中長期、例えば5年先にプロダクトを作る時に、選択肢になるような技術を予め研究開発するっていう仕事ですね。成功も失敗も含めて。

-先の研究をされてるのですね。

まつもとりーさん
さくらの研究所はオープンなんで、会社のためでもあるんですけど、会社を通じて社会のためにもやっています。
だから僕の研究はさくらのためだけじゃなくて、そういう研究開発がいろんな企業が使えるように、研究は全部オープンにしています。

また、日本のカンファレンスだけじゃなく、世界でも特にアカデミアの高いランクとか、インターネット基盤技術という自分の専門領域の世界で、最も難しいと言われるカンファレンスや学会に論文を通したり発表することもやろうとしてます。
サーバー管理では機械で自動化できる所もあるけども、どうしても人が扱わないといけない領域ってのがあって、そこを改善していかないと、システムの発展が人の動きの限界に依存してしまう。
そこで、インターネットの運用技術について研究開発をしているんです。
さくらのいいところは、大学だと研究としてのノウハウとか伝統的な知見はあるけども、データとか大規模なプロダクトがないので、そういう点は企業の研究所ってのはいいんですよね。
両方をサービスとして提供しているし、その中で沢山課題が生まれてきているので、それを研究しながら知れるって言うのは、僕の研究分野では必須だなと思っていますね。

-そうなんですね。ところで、福岡に来られたのはペパボさんの時ですよね?福岡に研究部門を作ろうと思って?

まつもとりーさん
福岡に来たのは2015年3月なので4年前になります。
たまたま博士課程にいて、終わったらどこかのエンジニアとして就職しようかなと思っていた時に、当時のペパボのエンジニアでトップの方に声をかけていただいて、福岡全体を技術面でみて欲しいって言われて入ったんですね。元々は福岡に馴染みがなかったんです。

-そうなんですか。福岡はどうですか?

まつもとりーさん
結婚してたので、引っ越しする前に、福岡でRubyのイベントとかに行くついでに、一応色々歩いたりとか調べたりしたんですね。
僕は移動がすごく苦手で、大阪や京都ってすごく混んでて、移動が大変な所だったんですけど、福岡って、同じくらいの都会なんですけど、移動がすごい楽なんですよね。
それこそ徒歩でも行けるような距離感でいろんなものがあったり、バスが発達してて、どこに行っても移動が楽。乗り物もたくさんあるから、人も分散されてるんですよね。
バスに乗って座れて、気が付いたら天神に着いたみたいに、移動の快適さがありますね。
これだったらどこに住んでも別にストレスなく、天神とかにも行けるなってのは、その辺はとにかく魅力でしたね。

-コンパクトな街ですからね。

-私たちとしては松本さんのような優秀なエンジニアさんがいて、全体的な技術レベルが上がっていけばいいなって思うんですけど、優秀なエンジニアさんを集めるにはどういうやり方がいいんでしょう?

まつもとりーさん
結構難しいんですけど、福岡のエンジニアってみんなすごくとがってて、彼らをできるだけ応援してきた経験もあるんですけど、今組織では、自由で裁量があるんですね。裁量があるから自由にやれるんですけど、でもそうするとリーダーシップを発揮できる人だけが目立ってしまう。
リーダーシップがないとと思って個人で頑張るんですけど、しんどくなって辞めちゃうんですよね。
すごい自由で裁量があって快適な街だからこそ、リーダーシップある人とか発言力ある人だけがすごく目立っちゃう。

リーダーシップがあるかないかっていうのは、エンジニアリングの一つの要素でしかないじゃないですか。
リーダーシップよりも、フォロワーシップという、誰かが何かをやろうとした時に、それすごくいいですね、じゃあ自分はこういうことをやりますねっていう風に、リーダーシップを発揮する人を支える人
今まで、リーダーシップある人が偉くて、それを周りで支える人は、それに劣るみたいな雰囲気があると思うんですけど、裁量がある組織では、リーダーシップとフォロワーシップって同じぐらい価値があるんですよね。
フォロワーシップがスキルとしてすごく重要で、それができる人がいないと、頑張ろうとしてる人がどんどん埋もれていって、全体としてはレベルの底上げに繋がらない。
だから、リーダーシップを発揮できる人は発揮したらいいし、そんな人をフォロワーシップとして押し上げられる人が増えると、全体を押し上げることができると思うんですね。

ペパボでは、僕は結構そういうやり方をしてたので、どんどんとスキルの高い人が伸びていったんです。
福岡の現状を見てると、やっぱりそこだろうなと思いますね。
フォロワーシップっていうのをちゃんと自覚して、アイデアを持ち寄る人とかやろうとしてる人を積極的に支えるスキルっていうのが。

-そういう意味でいうと、エンジニア賞というのは、そういったフォロワーシップを発揮する方々を表彰するというのも大切ですね。

まつもとりーさん
それはすごくいいと思います。縁の下の力持ちというか。
トータルですごく綺麗な状態にするっていうのを裏で積極的に支える、それを意識している人ってたくさんいると思う。
それをスキルとして評価するっていうのはすごくいいと思いますね。

-なるほど。ありがとうございます。話が変わりますが、松本さんが尊敬するエンジニアさんはおられますか?

まつもとりーさん
Rubyのまつもとゆきひろさんとか、Webサーバとかインターネットのプロトコルの標準化などに関わっておられるFastlyの奥 一穂さん、この二人はもうとにかく尊敬しつつも、やっぱりすごいことをやってて、例えば僕ができないことがあると、尊敬しつつもすごく悔しい思いをして、もうちょっと頑張ろうという刺激にもなっています。
また、僕の博士課程の時の岡部先生という指導教員で、今情報処理学会の副会長でもある方ですけども、非常にレベルの高い国際会議の論文を評価する中心の人。
その3人が、僕の取組みの中ですごく関係も深いし目指すところでもありますね。

-ちなみに、目標と思っていることはありますか?

まつもとりーさん
やっぱり、今自分がやっている領域で、エンジニアリング寄りのレベルの高い海外の技術カンファレンスに論文を通したいです。
去年はトップカンファレンスの難しいところに出した論文が落ちて、レベルとしては下がるワークショップっていうところに論文を通したんですけど、やっぱりトップカンファレンスとか本当に世界でレベルの高い、 Facebook とか Google とかそういう人が集まってるような技術カンファレンスにも、自分のプロポーザルと言うか技術を通したい、これが当面の目標ですね。
まあ当たり前に通せるようにならないと、そこのレベルに達してないし、そこに専念してる意味がないなって。

-それはなんというカンファレンスなんですか?

まつもとりーさん
アカデミアの方は、COMPSACとか、今年京都で開催される PerCom、あとUSENIXの系統がいくつかあるんですけど、もうその辺全部高いですね。
僕のアイデンティティが、エンジニアもやりつつ研究もやる。それが通せる技術スキルが、自分の目標ですかね。
アカデミアとしての研究の価値も示せるし、民間のプロダクトに対する価値も示せる。

-最終的にこうなりたいというものはありますか?

まつもとりーさん
今までの経験上、自分の技術力が上がったり出来ることが増えたりすると、またちょっと違う見方ができるようになる。
スキルがつけばつくほど、これまでできなかったことを考えられるようになったり、新しいことを思いついたりできるようになる、というのがあって、世界的に通用する技術を身につけた時には、多分、今以上に面白い思考だったり、いろんな情報から新しいアイデアが生まれるみたいな、そういう思考をする取組みをずっと楽しんでいたいですね。
それが、結果的に社会に還元されていくってのはもちろん大切ですけど、そういう世界のトップクラスの技術を持った自分が、ずっとその技術について新しいものを生み出したり面白いことを考えてる、そのサイクルを、頭が健康に生きてる間ずっと考えていたいです。
その辺は、遊びみたいな感じですね。

-できる人だけが味わえるような感覚があるのかもしれないですね。これが分かったらまた次の見方が分かってみたいな。是非松本さんから、業界の新しい標準になるような研究開発が出るといいですね。

まつもとりーさん
そうですね。そのつもりですね。福岡からもうあんまり移動する気はなくて、やっぱ世界基準で考えたら、福岡って拠点としてすごいいいんですね。
世界はどこに行くにしても国内にしても、この行きやすさで便利な移動手段がたくさんある状況って、世界探してもまれ。福岡は日本でもかなりいい拠点になると思う。
そこで世界に通用する取組みを発信していきたいなって思います。

-エンジニアカフェで、市内のエンジニアさんも、世界の優秀なエンジニアさんも来て、技術力の底上げが図れたらと期待してるんですが、その取組みにアドバイスいただけますか?

まつもとりーさん
現時点でもこんなに行政に近いっていうのが、今までにない感じなんで、すごく満足はしてるんですけど、何でしょうね。
コミュニティ含めて、インターネットって日本だけじゃなくいろんな所に繋がってるんで、グローバルな目線で福岡市がどうサポートできるかを考えていくといいんじゃないでしょうか。
僕もエンジニアでありつつ研究者でもあり、世界に対していろんな取組みをやって、当たり前に外に出て行って、それを持って帰って話す、そんな雰囲気をもっと出していきたい。
そして、フォロワーシップとしてエンジニアが怖がらずにいけるような雰囲気を、福岡市と一緒に作りたいっていうのはあります。
福岡ってそれ単体で価値のある感じがするんですよね。
世界レベルで見た時も本当に福岡の街としての便利さ、僕が海外とかを見据えながら拠点としていろんな研究開発する中でも思いますね。

-松本さん、今日はお忙しい中、貴重なお話をありがとうございました!

 

松本 亮介さん(まつもとりーさん)略歴

京都大学博士(情報学)、さくらインターネット研究所上級研究員、ペパボ研究所客員研究員、Forkwell技術顧問、セキュリティ・キャンプ講師、情報処理学会各種委員、松本亮介事務所所長。

2008年に現場の技術を知るため修士に行かずにホスティング系企業に就職したのち、2012年に異例の修士飛ばしで京都大学大学院の博士課程に入学。インターネット基盤技術の研究に取り組み、mod_mrubyやngx_mrubyなどのOSSを始めとした多数のOSSへの貢献や学術的成果を修める。

2015年4月より2018年10月までGMOペパボ株式会社にてチーフエンジニアとしてプロダクトのアーキテクトやエンジニア組織のマネージメントに従事すると同時に、ペパボ研究所では主席研究員としてOS・Middleware・HTTPに関する研究、及び、事業で実践できるレベルまで作りこむことを目標に研究に従事。

2018年11月より現職のさくらインターネット研究所で上級研究員を務める。

第9回日本OSS奨励賞や2014年度情報処理学会山下記念研究賞など、その他受賞多数。2016年に情報処理学会IPSJ-ONEにおいて時流に乗る日本の若手トップ研究者19名に選出される。

所属
2018年11月 〜
さくらインターネット研究所 上級研究員
ペパボ研究所 客員研究員
株式会社grooves Forkwell技術顧問
一般社団法人セキュリティ・キャンプ協議会 セキュリティ・キャンプ講師
情報処理学会 インターネットと運用技術研究会 運営委員
松本亮介事務所所長

経歴
2018年11月 さくらインターネット研究所 上級研究員 就任
2018年11月 さくらインターネット株式会社 入社
2018年11月 ペパボ研究所 客員研究員 就任
2018年10月 GMOペパボ株式会社 研究開発チーム チーフエンジニア 退社
2018年08月 株式会社grooves Forkwell技術顧問 就任
2018年07月 情報処理学会 第11回インターネットと運用技術シンポジウム(IOTS2018)プログラム委員
2018年04月 一般社団法人セキュリティ・キャンプ協議会 セキュリティ・キャンプ 講師
2018年03月 情報処理学会 論文誌「レジリエントな情報システム構築によるインターネットと運用技術」特集 編集委員
2018年03月 GMOペパボ株式会社 研究開発チーム チーフエンジニア 昇格
2017年12月 情報処理学会 第10回インターネットと運用技術シンポジウム(IOTS2017)プログラム委員
2017年05月 情報処理学会 第37回インターネットと運用技術研究会(IOT37)プログラム委員長
2017年05月 京都大学博士(情報学) 授与
2017年01月 情報処理学会 インターネットと運用技術研究会 運営委員 就任
2016年07月 ペパボ研究所 主席研究員 就任
2016年01月 GMOペパボ株式会社 技術基盤チーム シニア・プリンシパルエンジニア 昇格
2015年04月 GMOペパボ株式会社 技術基盤チーム プリンシパルエンジニア入社
2015年03月 京都大学 大学院情報学研究科 知能情報学専攻 メディア応用講座 岡部研究室 博士後期課程 研究指導認定退学
2014年12月 HiganWorks, LLC.の代表兼CTOを退任
2014年03月 HiganWorks, LLC.の代表兼CTOに就任
2012年10月 フリーランスエンジニアとして起業
2012年04月 京都大学 大学院情報学研究科 知能情報学専攻 メディア応用講座 岡部研究室 博士後期課程 入学
2012年03月 京都大学 学術情報メディアセンター 研究生 満了
2012年01月 京都大学 博士課程出願資格 取得(修士卒相当と認められる)
2011年10月 京都大学 学術情報メディアセンター 研究生 入学
2011年08月 ファーストサーバ株式会社 退社
2008年04月 ファーストサーバ株式会社 入社
2008年03月 大阪府立大学 工学部情報工学科 卒業
2003年04月 大阪府立大学 工学部情報工学科 入学
2002年03月 私立 洛星高校 卒業

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